音の絵葉書|井上芳雄とジャズ──ミュージカルスターのもうひとつの響き
2026年3月7日放送の『MUSIC FAIR』(フジテレビ系)「3100回記念コンサート 第1夜」で、井上芳雄さんはミュージカル『アラジン』より「フレンド・ライク・ミー」を披露しました。
ミュージカル俳優として知られる井上さんには、ジャズやスタンダードナンバーに向き合ってきた歩みもあります。今回は、舞台とは少し異なる角度から、その歌声に耳を澄ませてみます。
ミュージカルの言葉、スタンダードの言葉
ミュージカルの歌は、役の感情や物語を背負って客席へ届きます。一方、ジャズ・スタンダードは、言葉の置き方や間、声の距離感によって空気が変わります。
作法は同じではありません。それでも、言葉を音楽の中で生かすという点には、共通するものがあります。井上さんがスタンダードを歌うとき、舞台で培った表現が別の形で現れているように、筆者には感じられます。
Billboard Live TOKYOでの挑戦
井上さんは2014年7月、Billboard Live TOKYOで「井上芳雄 -Come Fly With Me- Birthday Special Week」を開催しました。この公演を収録したDVD『井上芳雄 at Billboard Live TOKYO~Come Fly With Me~』は、2015年1月28日に発売されています。
公式の商品情報によると、収録曲には「Come Fly With Me」「My Way」「Stardust」などのスタンダードナンバーが並びます。ミュージカルの舞台とは異なる空間で、ヴォーカリストとして楽曲と向き合った記録です。
近い距離で届く歌
Billboard Liveのように客席との距離が近い会場では、歌声の大きさだけでなく、呼吸や言葉の置き方まで伝わります。華やかに押し出す瞬間と、声を近づける瞬間。その切り替えも、スタンダードを聴く楽しみの一つです。
「Come Fly With Me」は、軽やかな誘いを感じさせる曲です。ここでは歌詞を転載せず、声の運び方やリズムの揺れに注目して聴いてみると、ミュージカルでの歌唱とは異なる表情に出会えるかもしれません。
テレビから、もう一つの歌声へ
『MUSIC FAIR』で披露された「フレンド・ライク・ミー」では、物語を立ち上げる華やかな表現を聴くことができました。そのあとに「Come Fly With Me」を聴くと、同じ歌い手がつくる距離感の違いが見えてきます。
光の中で大きく広がる歌と、近い場所で静かに表情を変える歌。その両方を行き来できることが、井上芳雄という歌い手の幅につながっているのではないでしょうか。
余韻
一人の歌い手を、いつもとは違うジャンルから聴き直すと、これまで気づかなかった声の表情が見えてきます。ミュージカルからジャズへ、あるいはジャズからミュージカルへ。二つの方向から、その響きを楽しんでみてはいかがでしょうか。
お読みいただき、ありがとうございました。
Words by Roy
参照資料
フジテレビ「MUSIC FAIR」2026年3月バックナンバー
井上芳雄オフィシャルサイト CD/DVD/他
Billboard JAPAN 井上芳雄インタビュー
井上芳雄オフィシャルサイト

